2019 年度第 1 回関東ウェーブの会例会(4 6 日)報告

 

今回は事務局も含めてゲストの方も招き,18 名の方々が参加されました。

 

主に三つの話題を中心にして,意見交換を行いました。一つ一つの話題を丁寧に取り上げることができたように思います。最後に総会に向けた事務局からの趣旨を簡単に説明させていただき,参加者の皆さんからご意見をいただきました。以下は報告となります:

 

【話題 1: 躁の病識とコントロール】

【話題 2: どこから病気,どこから本来の自分?】

【話題 3: 5 回世界双極性障害デーフォーラム(2019 3 30 日)の報告】

 

 

【話題 1: 躁の病識とコントロール】

 

・母の協力が必要。躁状態になると,金銭管理を母にしてもらっている。

カウンセリングを受けた際,臨床心理士から「その場でできるかぎりのことをすると上がってくる」と聞いた。そこで,「うつになってできることはなんだろう」,と考えて行動したところ,好きなことをすると自然に上がり,フラットになることがわかった。

 

・活動量計をつけるようにした。普段から 6 時間も寝ていないが,躁状態のときは 4 時間代しか寝てない。

そこで,活動量計(腕時計型)を使用し,短めであれば昼寝の時間を増やすようにしている。そうすると一日全体の活動量が減る。

 

・本気で躁だったら一切寝ないで動き回ってしまう。睡眠のグラフをつければ,一日何時間寝ているかわかる。23 日寝ない場合は入院になるので,気をつけている。何度か躁状態を経験すると,躁状態であることが感覚でわかるようになる。ネット投稿が多くなったり,多弁・多動・発想が多く出てくるようになる。しかし,それらを抑えきれるわけでなく,今は対処療法として,人を巻き込んで自分にとっても人にとっても害になることはしないようにするようにしている。料理をしたり,絵を描くことをしている。絵については何かの目的のために絵を描く,ということをしている。害にならないことにパワーを向ける。お金は使いすぎないよう,持たない,クレカは作らないようにしている。

 

・家に帰ってくると,そわそわして人と話したくなる,行動したくなる,外に出たくなることがわかった。とにかく睡眠を取ることで対応している。今はデパスを飲んで寝るようにしている。嫌なことがあっても寝るようにすると良いと感じている。短期記憶が弱いので,それを逆手にとって,寝ることでリセットするようにしている。

 

・今までの経験では,寝逃げ対策が多い。仕事の場では,頭が混乱しないようにコントロールすることを考えている。前職の上司がいい人で,「もしあなたの仕事がきつければ他の人に頼むこともできる」,と言ってくれた。他人を頼ることを対策としている。

 

・躁状態のときがわからない。対して,うつのまっ最中には,パキシルとサインバルタとクエチアピンをマックス飲んでもうつのようになるし,死んだほうがいい,いなくなったほうがいい,と思う。しかし薬はこれ以上増やせない。最初はパキシルで躁転した。車はジープから赤のアルファロメオにして,しかも交通違反もしてしまった。散財もひどかった。また,愛犬 1 60 万などを飼った。服は派手になり,犬の散歩の際は水着になった。何十時間も模様替えを行ったこともある。休みの日には海外に行き,そこで仕事の面接を行なったこともある。仕事もバリバリできいていた。危ないこと,例えば出会い系サイトで海外の方と知り合い,すぐに渡航したこともあった。周囲の忠告を聞かなかったら,周りが離れていった。その後,破産したことで社会を知った。クレジットも作れなくなった。今は生活保護で一人暮らしなので,あの時に戻りたいとは思うが,戻れないこともわかっている。躁転したことについては,薬物躁転であると思っている。金銭面以外の多幸感や万能感についてはあの頃に戻りたいと思う。

 

・お風呂に入ると良いようであった。

 

・昔は病識が持てなかったし,調子が良くて気持ちいい,楽しいと思っていて,それが悪い状況だとは思わなかった。ジェイゾロフト服用で気分が上がったときには,「やった,良く効いた」と思った。ここ最近は睡眠時間がいつもの半分や 1/3 になると躁状態とわかるようになった。逆に,いつもの倍や 3 倍の睡眠時間になるとうつであることもわかる。また,買い物をしだしたりすることで,躁状態になったとわかる。今は薬(リーマス)の量を増やすようにしているが,薬の力価は,量だけではなく,服用している期間も関係があり,期間を超えるまでの間に症状を抑えることが大変である。躁状態のときは衝動性の「たががはずれた」状態とわかっているが,それでもたがのはずれたことをやってしまうことがある。「衝動性のたが」については顕在意識として持っているようにしたい。潜在意識が優位なのはわかっているので,意識的に,潜在意識による行動を拒否ができるような訓練をしたいと思っている。

 

・仕事が大好きになり,仕事場で上の人と「日本一になる」と言ったりする。そのような言動に家族が気づき,病院に連れて行かれることがある。最近になって大きな躁状態が初めてきたので,これからいつ来るかわからない。今は活動量やお金をセーブするようにしている。不用意にたくさんのものを「これは確実に必要である」と思いこんで買ってしまい,月に 10 万円以上買ってしまったこともある。自分は退院したばかりなので,これから病気と上手く付き合えるようにしたい。絵が好きなので,絵を描いたり,公園や海に行くことで無害な方向に持っていっている。

 

・自分は他の人が言うような状態がないので,どういったものが躁状態なのかわからない。しかし,過集中がある。いきなり落ちることもある。毎日自分の気分を記録することをしているが,何度か挫折している。

できる限り簡単に客観視して「なんで堕ちたか」を考える。

 

・過去のトラウマを思い出し,イラつくことが自分の躁状態である。対策として,リスパダールで気分を落ち着けるようにしている。最近はサプリメント(ギャバ:副交感神経に働くもの)を夜に摂取している。

 

・自分は気分の暴走を止められないことは経験上わかっているため,環境に自分を落とし込むことはあきらめている。逆に,環境を自分に合わせるようにしている。自分は研究の世界に生きたいし,それならば自分の特性と合うと思っているので,環境を自分に引き寄せたいと考えている。

 

・(上記パートナーから一言)パートナーは,環境を自分に合わせていると言うが,実際は環境が自分に合わせてくれている。自分もその環境の一つ。どうせ,暴走は止まらないので環境をできるだけ合わせてあげるしかないと思っている。

 

・自覚できる躁状態が来たのが 12 年前。最近は自分が躁状態になったことがわかるようになった。声が大きくなり,早口になり,しゃべりが止まらなくなる,タメ口になる,ということに対して「おかしいな」と思うようになった。また,躁の際は,理由がないのに楽しいと感じる。例えば難しい内容の講義で,それは楽しいはずがないのに,楽しいと感じてしまうようなことがある。また,自分で予定を詰め始める,仕事帰りの予定を 78 個書き出してしまうことがあるが,最近は途中で「これは躁だ」と気がつく。対策としては,書き出した予定を一つでも減らす,などを試みている。また,喋りの際も自分の喋りを意識するようにしている。

 

・桜がやたらきれいに見えたり,お笑いがやたら面白くなったりすぐに感動したりすると躁状態だとわかる。

毎日,気分のグラフと日記をつけるようにしている。最近はマインドフルネスを行っている。怒りが起きた時にマインドフルネスを行うと落ち着くことがわかった。また,躁状態になったときはそのパワーを料理に向けるようにしている。また,一日の生活を規則正しく,そして毎日のルーティンを決めるようにして,多くやりすぎないように意識している。もちろん薬を飲み続けることが一番だが,そこからはみ出ることは自分で意識してコントロールするようにしている。

 

・(話題提案者からの質問)買い物が多くなるという人が多いが,そもそもお金はどうするのか?資産が多いのか,ないけれど買うのか?

消費者金融,クレカ限度,借金してでも買う。万能感があるから「後で返せるし〜」と信じ込んでいる。借りられるものは全部借りる。

 

 

【話題 2: どこから病気,どこから本来の自分?】

 

・本来の自分がどこかは自分で決めたほうがいい,というか,自分で決めるしかないと思う。例えば,自分は病気なのだから薬を飲んで生きなければならない,この症状は悪だ,などという基準のようなものはなく,個々で違うと思う。自分がどの位置で行きていくかということを決めることが基本的なスタンスだと思う。

 

・病気かどうかというよりも,本来の自分の人格を構成しているのは遺伝と環境である。脳関連の病気となると,病相と本来の自分が相互に作用すると本で読んだが,自分自身もそう思う。例えば今は,自分はネックレスを 3 本しているが,昔はそういうのは大嫌いだった。それは,躁を経たからかもしれないけれど,自分の軸がぶれないならば,今の自分を楽しんだらいいと思う。自分というのは,環境も病気も含めてなのだから,あまり本当の自分というのを突き詰めずに,あまり行きすぎない程度で楽しんだらいいと思う。

健常者でも変化するのだから。

 

・病気がもしなかったら,自分はどうなっていただろう,というものはない。病気でやらかしたことも何もかも,本来の自分だと思っている。治療は,「本来の自分がやらかす悪いこと」をコントロールすることであると思う。基本的な認識として,病気でない本来の自分が存在するとは思わない。

 

・病気を受け入れきれていると,上記の人のように感じることができるのだと思う。自分は,まだ病気を受け入れきれていないので,自分が 2 人いるように感じる。自分は一人暮らしなので,気づいてくれる人がヘルパーさんしかいない。うつ時の寝たきりの状態や,イライラしている状態を見るのはヘルパーさんのみなので,ヘルパーさんに「私はいつもの自分と違いますか?」と問うたことがある。

 

・「本来の自分」という場合に,自分はもう本来の自分ではない,としてしまうのか,今の自分が本来なのか,考えてしまうことがあると思う。もし発病しなかったらこうであったかもしれない,というのを本来の自分と思っている人もいるかもしれないが,今の自分が本来だと思えるといいと思う。

 

・昔の仕事ができなくなり,今の仕事もできない自分が悔しく,やはり今の自分を受け入れきれない。自分は躁状態がほとんどない 2 型だから,よけいに受け入れきれない。

 

・ケイ・ジャミソンは,「自分はもう一度生まれるなら躁うつ病で生まれたい」と言っている。躁うつでなければ得られなかったものと,失ったものを比較したときに,「これでよい」と思えるかどうかが重要であると思う。

 

・今までの人生で,「これは本来の自分ではない」と思いたいことはあると思う。病気の自分を,「本来の自分」像に近づけたい,という意味で「本来の自分」を持つことは悪くないと思う。

 

・自分は,考えが飛躍して「会社をよくしよう!」などといった大それたことをする自分のことも好きだ。

普段の自分とは違うとは思うけれども,そういった自分も一つの自分であると思う。

 

・発症して初めて本当の自分を見つけられた。こんなパワーを持っているんだ,という発見があった。

 

・自分は自分が 3 人いると思っている。普通と躁とうつの自分。

 

・自分は,昔は二重人格くらいの気持ちでいたが,いつしか一人になってきたと思う。

 

・「引っ込み思案で臆病な私」,「積極的で楽しい私」,の 2 種類がいて,今日はこっちの自分だな,と感じている。自分では後者の私のほうが好き。

 

・躁のときもうつのときも,「本来の自分」は出ていると思う。本来の自分が明るく出るのが躁で,暗く出るのがうつだと思っている。パワーが燃える場合が躁であり,「自分」の出方の方向性違うだけではないかと思う。自分というのは一つであると思う。

 

・人に「つらそう,大変そう」と言われると否定してしまう自分がいるので,自分の病気を受け入れきれていないのだと思う。自分は認めたくない過去があるために,そのように思ってしまうのではないか,と言われた。

 

60%で生きていく,考えていくという「60%ルール」とよく言われることがある。

 

・この病気になるまでは,育児・家事・仕事,すべてやっていた。この病気にいきなりなって,自分ができていたことが全部できなくなってしまい,「これは自分ではない」と認めたくない気持ちがあった。また,今まで知っていた人に,見下されたくないと思ってしまう。プライドが高いのか?なんでできていたのにできないの?と。

 

・本当は「本来の自分,できていた自分」を続けたかったが,できないことに対してとても悔しい。

 

【話題 3: 5 回世界双極性障害デーフォーラム(2019 3 30 日)の報告】

 

フォーラムの概要:

日本うつ病学会の中に,双極性障害委員会という名前の委員会がある。加藤忠史先生,秋山剛先生,演者として與那覇潤さんが登壇した。

 

フォーラムの感想:

・與那覇さんは昭和から平成にかけての変遷の話をしていて,双極性障害の今,という話はなかった。自分は最新の発見や治療法が聞きたかった。双極の治療は昔からあまり変わっていない,製薬会社は頑張っているけれど,医者や研究者はまだまだだな,と思った。

 

・障害者雇用の改定について医者が懸念していることは,「障害者雇用の比率を上げたことで,手帳を持っていない人に手帳を取らせて障害雇用になったら怖いね」,ということだった。実際,障害者雇用をなんとか確保しようという企業が多いと自分も感じている。

 

・体験を振り返って自身をどう受け入れるか,自分を一つの作品として捉えたらどうか,と当事者の與那覇さんが言っていた。

 

NTT 病院の秋山先生の,「病気はその人の一部のみであり,すべてではない」というのが印象的であった。双極性障害の,オフィシャルでない集いが必要になってくるであろう,とも言っていた。また,双極性障害と発達障害の研究者は日本には少ないとのことも言っていた。単極性のうつ病は認知度があるが,双極性障害はまだまだ理解されていないと言っていた。

 

・自分は,「この委員会はどのような活動をしているか?」と聞いたら,「HP で周知したり,このようなフォーラムを開いたりしている」,と濁された。また,メディアが来ていたが,どこに公表されるか不明。

 

・患者はうつの方が辛いので,うつのことしか主治医に伝えないが,リズム表などを作って主治医に見せたほうがいいというアドバイスがあった。

 

・躁うつ病だからといって結婚や仕事を避けているのはおかしい,と秋山先生が言っていた。

 

・秋山先生は,化粧や華美な服装,サングラス,などをして診察に入ってくる人はだいたい躁うつ病なんじゃないか,みたいなことを言っていたが,その判断はどうかと思う。

 

・躁のときはテンポのいい音楽が心地よくなるらしい。

 

・秋山先生によると,集団療法での同じ病気の仲間は大切とのこと。同じ病気でないと絶対に共有はできないし,理解もできないし,仲間にはなれないんじゃないか,と言っていた。病気について価値を感じさせてくれるのが仲間であって,仲間は大切だが,一方で病気の邪魔にならないようにすることも必要であり,仲間を見極めることが大切であると言っていた。医療従事者は患者の人生の邪魔にならないようにしている,と言っていた。

 

・躁の前駆症状を書き留めておくことが大切だと思った。

 

・秋山先生(50 代後半?)がかなりしゃべっていて,加藤先生は司会という形。

 

 

【総会について】

 

事務局から:

・年度会員制についてはっきりしていなかった。会員認定証の中には「その年度だけだ」と書いてあるが,会則や細則には書いていなかった。年度会員制については会則と細則に書く。

 

・今は会員(総会の議決権を持つ)は当事者に限っていた。これからは,賛助会員(議決権は持たない)として,当事者以外の参加も可としようと思うが,次回の総会で決定したい。

 

・会則と細則の文言については改正を重ねたい。

 

・事務局員を募集しているので,立候補してほしい。

 

・事務局員の他に,スタッフという立場もあるのでよければどうぞ。

 

・総会は 6 1 日です。

 

以上